2025年には新興市場(EM)への関心が高まっています。評価額は依然として低いものの、最近の成長傾向や為替の不安定さといった外部リスクにより、投資家の見方が変化しています。本記事ではファンダメンタルズを分析し、現在の経済指標を検討し、新興市場が本当に割安な投資機会なのか、それともリスクを伴う罠なのかを検証します。
バリュエーション:魅力的だが、ただのチャンスではない
バリュエーション 指標(PERやPBR)は、投資家が収益や資産に対してどれだけの金額を支払っているかを示します。
- MSCI新興市場:PER 約14.42、PBR 約1.81
- MSCIワールド(先進国市場):PER 約22.46、PBR 約3.49
データからは、新興市場の株式が他の投資選択肢に比べて割安であることが示されています。この割引率は、価値ある投資機会を表す可能性がありますが、政治的リスクやガバナンスの問題を反映している可能性もあります。すべての新興市場が同じ動きをするわけではありません:インドのPERは22(約26.46)を超えており、投資家の信頼が強いことを示していますが、他の市場はディープバリューの状態が続いています。
成長モメンタム:期待されるが、注意点あり
新興市場の低い評価を正当化するには、利益成長が不可欠です。過去のパフォーマンスが低迷した後、2025年に向けた見通しは改善しています。アナリストは、新興市場企業の1株当たり利益(EPS)が今年14%程度増加すると予測しており、これは先進国市場の予測である8〜10%を上回っています。これは、多くの新興市場指数で予想PERが11〜12倍であることを裏付けており、将来の利益に対して投資家が支払っている金額が比較的少ないことを示しています。
とはいえ、成長は均等ではありません。2025年1月の新興市場向けグローバルPMIは、51.9と2024年9月以来の最低水準に達し、一部のセクターでは採用や活動が控えめとなっています。製造業は好調であり、アジアが最も有望な成長地域として注目されています。一方、ラテンアメリカや東欧は引き続き停滞しています。
要点:利益成長の兆候はあるものの、原材料コストの上昇や貿易摩擦といった課題に注意が必要です。
為替リスク:地域別に注目すべき点
新興市場に投資する際は、株式のパフォーマンスだけでなく、通貨の動きがリターンに影響します。2025年のこれまでのところ、ブラジルレアルは約14%上昇しており、これは高金利と米国の利上げ停止によるものです。ただし、財政赤字への懸念は依然として存在します。東南アジアでは、マレーシア・リンギットとインドネシア・ルピアは安定していますが、これは外貨準備高と輸出の強さに支えられています。しかし、ドルが強くなると状況は急変する可能性があります。東欧では、ポーランドやハンガリーは比較的安定していますが、トルコリラは今年さらに10%下落しました。南アフリカのランドは約7%上昇しましたが、コモディティ価格や世界的なリスク選好の影響を受けやすい状況です。
まとめ:為替リスクは現実のものであり、見過ごされがちですが、無視すべきではありません。為替市場のトレンドを注視し、地域別に通貨エクスポージャーを分散させることが、EM投資のリスク管理に有効です。
マクロ経済の逆風と政策の不透明性
2025年の新興市場は、さまざまなシグナルを受け取っています。最近の関税措置により、4月の景況感が悪化しました。国連は世界経済の成長率を2.8%と予測していますが、その成長はまだ不均一です。多くのEM中央銀行は、以前の利上げ後に利下げに転じる可能性があり、これは経済成長が維持される場合には市場にとって好材料となります。投資家は、インフレの動向、貿易摩擦、政策の方向性の変化に注意を払う必要があります。
先進国 vs 新興国:相対的視点
高い評価額を持つ先進国市場は安定性を提供します。S&P 500はPER 20超で取引されており、成長が鈍化していても投資家の信頼が強いことを反映しています。一方で:
- EMの利益はより早く成長しています(+14%)
- EMの評価は割安です(PER 約14)
さらに、EMファンドには資金が流入しており、中国を除くMSCI新興国指数を追跡するファンドは2025年にS&P 500を上回る成績を記録しています(バンク・オブ・アメリカのストラテジストが言及)。
結論:チャンスと注意が共存
2025年の新興市場は、低い評価額、改善される収益予測、資金流入によって、流動性のある価値投資のチャンスを提供しています。しかし、経済成長の不均衡、貿易の不確実性、通貨の変動はリターンに悪影響を与える可能性があります。
投資戦略:
- 国ごとに選別し、安定成長・財政健全・政策信頼のある国に注目
- 地域ごとに通貨の分散を図る
- 為替変動への対策として部分的なヘッジも検討
最終的なポイント:中長期的視野を持ち、価格変動への耐性がある投資家にとって、新興市場は魅力的な価値投資の選択肢となり得ます。ただし、リスクがないわけではありません。常に「規律」と「分散投資」がカギとなります。