EUR/USD 通貨ペアは、5月の最安値である1.1066から上昇し、現在1.1242に位置しています。市場参加者は、この最近の価格上昇が中央銀行の政策の違いによる新たな上昇トレンドを示しているのか、それとも一時的な変動に過ぎないのかを評価しています。
それでは、この動きの背景にあるテクニカル要因とマクロ経済的要因を見て、今後何が起こる可能性があるかを考察してみましょう。
全体像:異なる中央銀行、異なる道筋
EUR/USDの最近の上昇は、ECBとFRBの間の政策格差拡大に対する市場の思惑が高まっていることを反映しています。
ECBは、ユーロ圏のインフレが落ち着いていることから、さらなる利下げを示唆するハト派的な姿勢を維持しています。一方、FRBは、インフレの持続、関税問題、強い米国の労働市場を理由に、利上げを据え置くタカ派的なスタンスをとっています。
2025年5月14日現在、EUR/USDは1.1242前後で取引されており、過去に価格が上昇に苦しんだ主要な水準である1.1378をわずかに下回っています。この水準を上抜けて維持できれば、4月の高値1.1574や心理的な節目である1.1600への上昇が期待されます。しかし、勢いを失えば、1.1065前後のサポート水準、あるいは過去200日間の平均価格である1.0794まで下落する可能性もあります。
EUR/USD:年初来の価格推移(2025年1月〜5月)

ユーロは年初に1.09を下回って始まり、3月と4月を通じて着実に上昇し、5月には現在1.1242付近で取引されています。この動きは、米国経済の減速とECBに対する市場の期待の見直しを反映しています。
出典:Investing.com。過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではありません。データは2025年5月14日時点。
この動きを引き起こした要因まとめ
- ECBの緩和的な姿勢:ECB当局者はさらなる利下げの可能性を示唆しています。通常、利下げはユーロ安につながりますが、投資家は経済全体の見通しが改善していると考えており、この効果を打ち消しています。
- 米国経済指標の弱さ:米国の雇用・インフレ指標が予想を下回ったことにより、ドルが下落し、ユーロが強含みました。
- 欧州の企業活動の強さ:欧州の企業調査で予想以上の結果が示され、地域の経済パフォーマンスが当初の評価を上回っていることが示唆されました。
- 投資家心理:ユーロの上昇期待は市場の自信の高まりを示していますが、これは期待と実際の結果に乖離が生じた場合、市場が急反応しやすくなるリスクも含んでいます。
注目すべきサポートとレジスタンスの水準
- サポートゾーン:1.1065(5月安値)、1.1028(55日SMA)、1.0794(200日SMA)
- レジスタンスゾーン:1.1378、1.1575(4月高値)、1.1600(心理的節目)
現在の市場状況はこれらの水準によって定義されています。1.1378を上抜けできれば、新たな強気投資家を引きつける可能性がありますが、この水準を突破できなければ価格は反転する恐れがあります。
主要テクニカル指標
- MACD(移動平均収束拡散法):MACDは上昇モメンタムを示していますが、その勢いは徐々に減速しています。さらに弱まる傾向が見られる場合、ユーロは下落に転じる可能性があります。
EUR/USD:MACDおよびRSI指標(2025年5月14日時点のスナップショット)

出典:Tradingview.com。データは2025年5月14日時点。
- RSI(相対力指数):現在RSIは約39で、最近の上昇モメンタムが弱まっていることを示しています。RSIが30を下回ると、ユーロが短期間で急激に下落したことを意味し、反発が起こる可能性があります。
- 取引量:EUR/USDが1.1242に近づくにつれて、取引量が減少しています。1.1378のブレイクアウトには、特に機関投資家による流入による取引量の増加が必要です。
結論:ユーロの勢いは現実的だが、無限ではない
EUR/USDは中央銀行の政策差とユーロ圏の経済データ改善という説得力あるストーリーで上昇していますが、重要なレジスタンスに直面しています。トレーダーは、上抜けと調整の両方のシナリオに備える必要があります。
重要なポイント:
EUR/USDは最近の安値1.1066から上昇し、現在は1.1242付近で取引されています。
レジスタンス:1.1378、1.1600、サポート:1.1065、1.0794。
MACDのモメンタムは減速中、RSIは中立、取引量はまだブレイクアウトを裏付けていません。
今後数日のFRBおよびECBの発言など、マクロ的な動きに注目しましょう。
常に予測ではなく水準に注目しましょう。柔軟に対応し、確認を待つ姿勢が重要です。ユーロの次の展開は、まだ始まったばかりかもしれません。